JR津田沼駅と新津田沼駅を利用する皆様の生活はもちろん、地域に共生し駅前の象徴的建物として津田沼の一時代を支えた津田沼パルコが令和5年2月28日、イトーヨーカド津田沼店が令和6年9月27日にその歴史に幕を下ろしました。
この津田沼の大型商業施設の閉店をきっかけに、今後津田沼では、第二次地域再開発構想が進むのではないかと思っています。
日本の一時代を飾った商業施設は、その存在意義から再生期を迎えた
昭和から各主要駅で消費者の生活を支えた全国の商業施設は、時代の移り変わりやビルの老朽化と共に、その存在も徐々に色褪せてきました。また1990年代前半からエスカレートした、大量生産大量消費という流通再編によるモノの低価格化から、使い捨てという選択肢が生活に浸透しました。
そこで収益率の低い大量販売、低価格競争、常にセールという企業間の訴求サービス合戦が始まり、実質無料やキャッシュバックなどのよくわからないポイントサービスの波が押し寄せ、モノやサービスに対する価格や価値への感覚が麻痺するかのような、平成の時代を過ごしました。
それと、買い物を駅前でするのが主流だった時代から、ECや郊外型SCへ一気に消費行動が移り変わり、百貨店離れやファッションビルへの価値観の変化などが進みました。この数十年にわたる時代背景と流れを考えれば、ここまで津田沼駅前に立ち続けてきた津田沼パルコや、かつて日本一の売り上げを誇ったイトーヨーカドー津田沼という存在は、地域の皆様とって生活の大きな支えだったのではないでしょうか。
津田沼駅南口のモリシアは2025年リニューアル、解体・再開発へ
津田沼駅南口にはモリシアという商業施設があります。この施設も2025年には建て替えが決まっており、2026年解体、期間中は全店閉館するのではないかと思われます。再開発には期待していますが、やはり大事なのは津田沼駅・新津田沼駅利用者だけではなく、周辺地域からの継続的な集客が課題ではないでしょうか。
お客様を呼べる魅力あるテナントをどれだけ誘致できるか、逆に企業側が出店したいと思う条件や購買層、また買い物に対する地元消費者の行動パターンとEコマースとの使い分けなど、様々な要素があります。
その他にも、多くの諸条件が揃わないとリニューアルや仮に新しい商業施設になっても、持続性のある集客から継続できる収支バランスを維持することはとても難しい時代です。来客に関しては、平日はフロアにほとんど人がいない時間帯もあるので、テナント誘致もアイデアを出し合い、今やどこにでもあるテナント以外での集客を考慮する必要があると思います。
元津田沼パルコA館の次の施設への憶測
A館はタワーマンションになるというお話で進んでいるようです。ですが、駅直結という超好立地を考えると、マンションだけではない気がしています。個人的にはコレド日本橋やオリナス錦糸町のように衣食住を揃えた複合商業施設や、2022年亀戸駅で開業した亀戸クロック(旧サンストリート跡地)のような、商業施設とマンションになるのが地域のためにもよいと思います。
パンデミックや世界の紛争以降、土地価格の高騰や物価高といった生活に影響を及ぼす状況を目の当たりにしている消費者心理を考えれば、大型商圏以外での商業地域の活性化や持続化は、ビックデータや人工知能では計れません。こういった商圏では分析と人の感情を動かす人間の本能的な導線を考えないと難しいですよね。
今は郊外の大型モールや大型ターミナル駅以外で集客の厳しくなった商業施設は、出店企業側も慎重にデベロッパーを選定する時代です。また、催事契約などによる固定費契約ではなく、期間限定のスポット契約も増加してきたことを踏まえれば、常に閑散とさせないフロア作りに苦悩する場面も増えているはずです。
駅前という好立地への勝手な憶測と理想論
津田沼駅前という立地は、ららぽーと東京Bay、幕張メッセ、東京ディズニーランド、成田空港、それに東京都心部や千葉房総方面にもアクセスのよい立地です。そう考えると、船橋シャポーのようにホテルとの一体型や、錦糸町の楽天地のようなスパとシネマ一体型、浅草ROXまつり湯のような温泉複合施設もありだと思います。
ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、都心型温泉施設へのチャレンジなんかもよいのではないかと思います。通勤通学帰りにお住まいの駅に着いたら、まずはほっとしますね。そのまま駅前で温泉に入って帰宅するという需要も意外と多いのではないでしょうか。
温泉と組み合わせて、例えば駅前集客型チェーン店に加え、地元飲食店さんで駅前日帰り旅行的コンセプトも時代的にはありだと思います。これはSNSマーケティング導線としてもいい感じではないでしょうか。
こういった取り組みは、これから津田沼周辺の高校、専門学校、大学を進学先として選択する学生さんやそのご両親が、進学する学校を選択する決め手の一つにもなると思います。
これは地域の皆様をはじめ、他県や近隣地域からビジネス出張や観光、それと東京駅まで30分というアクセスの良さで、津田沼駅や船橋・習志野地区周辺を利用する人が増えれば、地域事業にもいい影響を与えます。
そして集客が増えていくことで船橋市、習志野市にも大きな経済効果が期待できます。
それと、全国の中小企業の営業所や飲食店さんを誘致しやすくなるはずです。そういった駅前の賑わいが、地元を支える企業や飲食店さんの相乗効果にもなり、地域全体の活力にも繋がりますよね。
そんなわけで、いくつか想定できる構想を考えてみました。
大型テナント誘致構想もあり?
最近ではかなりお決まり感もありますが、大型テナントがワンフロアを大きく締めるパターンです。無印良品、LOFT、ニトリ、ダイソー、コメダ珈琲、紀伊國屋、カルディ、北野エース、それに食品売り場とレストラン構想もいいと思います。ど定番で安定感は強めですが、すでにある店舗も多いので新鮮さは薄いかもしれません。
メガドンキは理想的?
駅直結メガドンキ構想もありです。ちょっと賑やかな雰囲気がご年配の方々に合うかはわかりませんが、サイズ的にもメガドンキなら2フロアはゆうに使えるサイズです。ドンキは品揃えも豊富ですし、駅直結が効果を発揮しそうです。そのまま帰りにドンキで買い物して帰るパターンとして、幅広い年齢層の方々の生活リズムにハマりやすいのではないかと思います。
津田沼駅前に千葉県の飲食・フード系企業が集まる?
感染対策時の宅配サービスもそうでしたが、食というワードは集客には欠かせません。あまり現実味はありませんが、地元の船橋、習志野、市川、八千代、松戸、鎌ヶ谷、浦安をはじめ、県内のフード系企業で構成する津田沼フードパークモールなんていうのも面白いと思います。
ですが、この船橋・習志野地域には近くに船橋ららぽーともありますし、幕張イオンモールやコストコなどの商業施設も揃っています。また、船橋や津田沼は飲食店さんも多いので、地域でかぶるとお客様が分散してしまいますが、飲食店の集合体はSNSなどのPR・販促で確実に集客に繋ぐことできます。さらに駅前に温泉施設があれば、多方面からもアクセスの良い総武快速線、総武緩行線、各京成線からの集客も見込めそうです。
新津田沼駅直結イトーヨーカドー跡地はイオンの複合施設に
新津田沼駅直結のイトーヨーカドー津田沼店跡地は、京成電鉄とイオンが資本業務提携に合意、既に北口にあるイオンが新津田沼駅南口にもオープンするようです。
新津田沼駅直結という立地を活かし、シネマなど若い世代から高齢者まで世代を問わず利用可能な、サービス事業を中心とした複合商業施設として再開発が進む模様です。
仮に、新津田沼駅駅直結を有効的に活用するなら、2階をフードコートにして導線を作り、地下は食品、1階はメディカルフロア、3階はマッサージなど身体のケアや健康関連、4階は生活雑貨やファッション、イベントホールなどを展開していくことで、平日と休日の需給バランスも取れるのではないかと推測します。
課題は、来店客数や買い物一人当たりの購買単価の質が変化していることで、仮にリニューアルから数ヶ月はよくても、津田沼に周辺から人が集まりやすい環境づくりと、賑わいを演出する地域の共通認識可能な販促活動が大切です。
首都圏だけではありませんが、日本は今後さらに高齢化が進みます。2030年には人口の30%が65歳以上と推測されています。津田沼駅周辺でも主要商業地域へ小型無料送迎バスなど、駅前商業施設へ定期便を運行し、買い物を楽しめる回遊客サポート事業づくりが必須になるはずです。
これは次世代の皆様にも、津田沼周辺へのお引っ越しや、地域に定住化を検討する魅力の一つになると思います。
津田沼ミーナ【mina】は?
津田沼には新津田沼直結のミーナもあります。ミーナは津田沼から丸井が撤退した後、ファーストリテイリンググループ(ユニクロ、GUなどの運営企業)さんが運営しているテナント型商業施設です。町田や京都などにもありますね。
日本のファッションの価値観を変え、日本経済の流通促進を牽引しながらモノに対する固定概念を払拭し、グローバル化をやり遂げたユニクロさんの方向性によっては、今後日本国内の消費と経済の流れが変わると言っても過言ではありません。
ファッションというキーワードを中心に、ミーナはZ世代やビジネスマンが集まる商業施設として、また、新津田沼駅直結の立地を活かしてさらなる活性化に期待です。
LOHARUは現状路線か
津田沼駅には他にも複数の商業施設があります、ロハルは2017年に開業した複合商業施設です。ユザワヤさんや2フロアをほぼフルで展開する丸善書店さん、それから地域医療が集まるメディカルフロアなどがあり、飲食店やスーパーも入る生活色の濃いテナントさんが揃っています。建物自体もまとまっているので利用しやすい印象です。
パルコ閉店1ヶ月前くらいから、吉野家グループのカレーうどんチェーン、千吉さんに連日長蛇の列ができていたことを考えると、飲食店さんのグループ形成の方が、地域を盛り上げるきっかけを作りやすいかもしれません。
奏の杜フォルテ
さらに津田沼駅前には、奏の杜フォルテという複合商業施設があります。こちらは生活に密着したスーパーベルクさんを中心とした、大型のテナント企業さんが揃っています。津田沼駅前には多くの商業施設があるので、これから津田沼駅周辺に住むなどお考えの際は、まず買い物や飲食に困ることは絶対ないことがわかると思います。
津田沼の再開発は東の吉祥寺となるポテンシャルがある
津田沼の再開発に必要だと思うのは、津田沼駅と新津田沼駅、それから少し離れている京成津田沼駅との往復バスを分かりやすく身近に利用することも大切だと思います。
通勤通学の利用者と近隣から1回の乗り換えを利用して津田沼、新津田沼駅を利用可能な5駅〜10駅(JR総武線、総武快速、新京成線、京成本線、京成千原線、東西線、都営新宿線、東葉高速鉄道)を含め、車利用(船橋、習志野、市川、八千代、鎌ヶ谷、千葉方面)を含めた、新規集客に対するポテンシャルがどれほどあるかです。
その中で同じ中央・総武線の吉祥寺駅と環境的が似た雰囲気も感じます。津田沼も吉祥寺も東京駅まで約30分、それから吉祥寺は京王線明大前間の路線として、京王井の頭線が通っています。これはJR津田沼駅から新津沼駅と松戸駅を繋ぐ新京成線と似た環境です。
また、長く地元地域にお住まいの方々や、学生さんが集まりやすい生活環境が整っている部分も似ています。バスの路線便の多さも津田沼駅と似ている部分があります。
大きな違いは井の頭公園の存在とエキナカのアトレ、そしてこれが地域事業には大きいですが、飲食と物販が連なる吉祥寺サンロードのアーケード商店街の存在です。〇〇通りと名称のあるストリート飲食街は、吉祥寺駅前に近隣駅からも若者やビジネスマンが集まる魅力の一つです。
今後、船橋、習志野の地域全体の再開発以外に、地域の会社や店舗を気軽にプッシュしていける要素を、地域なりに再度模索する必要があります。千葉県でも船橋・習志野・市川・八千代・千葉・幕張・浦安・鎌ヶ谷・松戸・流山・柏は、県内でも東京隣接するポテンシャルの高い地域です。
千葉都民とも言われるこの葛南・東葛地域は、人口も多く住み心地のよい魅力ある地域だと思います。今後の再開発を楽しみにしながら、地域の未来のために少しでもお役に立てればと思います。
末筆
海外にて各現地の一体感や、地域内に広がる業界の枠を超えたビジネスの繋がりを体感しました。そんな経験から今後改めて世界に日本というブランド価値をアピールし、地域の事業モデルの再構築から、経済活動の幅を深掘りしていける環境づくりが大事だと感じます。
海外から日本へ訪れる外国人からすれば、首都圏は全てが東京という認識もあります。成田空港、羽田空港、茨城空港に到着後、空港から目的地へ移動する1時間前後の地域は、東京という感覚の人も多いです。グローバルな視点では、千葉県や首都圏の各県は全て東京であり、津田沼駅や船橋駅はそんな首都圏を代表する商業地域の一つです。
津田沼駅前を利用する地域の皆様が考えるべきは、今後さらにデジタル依存の高まる時代における、地域と商業施設の存在価値です。また、デベロッパー様及びテナント企業様に関しても、考えるべきは高品質、低価格が必然と認識している国内消費者の思考です。
そう言った概念で捉えれば、どの時代でも選択肢を広げるのはイノベーションです。大量消費を前提とした大型の箱に集客する時代は、人口ピラミッドの右肩上がりとともに過ぎました。こうあるべきという既成概念や過去の踏襲に習うべきと言う流れに違和感のある世代に、未来型消費者モデルの提案は、駅前に限らず急務です。
現在、インターネット利用者人口は概算で1億人を越え、スマートフォンが生活インフラの中心となりました。高齢者世代においても、ネットショッピングでポイントを貯め、資産として保有する時代です。この流れをビジネスの軸と考えれば、どの地域にもチャンスがあると考えられます。
津田沼駅前や周辺地域を支える事業者様をはじめ、行政機関や土地所有者様との連携で、地域住民が津田沼で買い物しやすい回遊導線を構築し、津田沼駅を中心に周辺地域を含めた経済の再構築が進むこと期待しています。