2022年1月にWordPress5.9からフルサイトエディティングver.6.0(現在は6.6.2)へのアップデートされ、ワードプレスは新たなステージへと移り変わりました。コアシステムとして本格導入された、ブロックエディター(Gutenberg)機能が、よりシンプルな操作性へと進化しています。
このアップデートによりサイトの編集機能がアップデートされ、ブロックエディター(Gutenberg)を編集画面とした、フルサイト編集(FSE)対応テーマの開発が進み、現在多くのテーマがリリースされています。Webサイト制作も変化のスピードに対応する時代に突入し、ワードプレスのベーステーマ、TwentyTwentyシリーズやその他優れたテーマなど、マルチ実装可能なプラグインが登場する環境になりつつあります。
ワードプレスはWeb制作へのはじめの一歩となる
2019年〜2020年にブロックエディタや、新テーマが続々リリースされた当初は、各プラグインとテーマの相性によるバグや不具合を結構感じましたが、今ではほぼありません。ですが実際にWordPressを導入されている中小企業やお店でも、ブロックエディタ機能を使用していないケースも多いのではないでしょうか。
世界中でCMSの活用が加速しても、日本ではCMSを活用しない制作手法が主流でした。それは、CMSをお客様が操作すると不具合が起こるリスクを重視してきた流れが、一般的に汎用可能なデジタル活用を阻んでいる部分でもありました。大規模サイトを基準とするならある意味正解だと思います。
※大手企業様や大規模なWebサイト制作、また凝った表現が必要なコンテンツを要するサイトであれば、元来の制作手法の方が断然優れていますし、間違いなく表現したい形になりやすいので、テーマ制作は用途次第です。
その間に、Facebook、Instagram、Twitter(X)、YouTubeやTikTok(抖音)などのソーシャルメディアが急速に普及し、スマホ一つで利用しやすく操作も難しくないことから、一般利用から広告同様の集客ツールとしても欠かせない存在になりました。これにはホームページの操作が身近に感じない実情や、デジタル発信に馴染みにくかった日本の環境下にも課題がありました。
ワードプレスの機能は、地域の中小企業やお店のための身近なウェブインフラになる
現在のブロックエディタやFSE編集は、SNS同様の気軽さとシンプルさがありますが、もっと一般的に使える正攻法な使い方を、日本でも普及し定着させていかなければ、また世界の中で周回遅れとして進む可能性も否定できません。
実際、投稿ページ以外にも画像を変更したい、バナーを追加したい、コンテンツを修正したい思っても、結局その都度制作会社依頼して、有料対応がそこそこ高額になることも多いと言ったご意見もお聞きします。
そうなると、ワードプレスをいつでも気軽に活用することができず、便利そうだし導入しようと考えても、結局二の足踏んでしまうケースが多くなります。特に今現段階でホームページがない会社や店舗、また無料サイトからちゃんとした自社ドメインのサイトに切り替えたいと思っても、難しそうだからやっぱりやめておこうとなってしまうわけです。
そして、誰でも簡単にできるって、ネットで検索すると情報は山ほど出てくるのに、結局制作側にとって都合のいいフレーズであるだけで、サイト運営者や初心者にとっては結局使いくいよねと、いったお話に繋がるわけです。
ホームページをワードプレスにしたいというご要望が多かったのは、納品後に社内である程度自由に操作できることを想定している、という意図もあったからです。もちろん最初から操作できない場合も想定した上で、簡単な作業に抵抗がなくなるサポート体制や、仕組みを整えなかった課題もあります。
結果、WordPressはもっと自由に使えるのかと思っていたなどの話もあることから、実際に制作側と依頼者側に大きな温度差が残っています。今は毎月サイトの情報配信をSNSやユーチューブと連携したり、サイトを1年に1回くらいプチリニューアルすることも、地域の会社や店舗様の社内でもできるような背景が、スタンダードであるべき時代だと思います。
フルサイトエディティング【WordPressバージョン6.0以降】
そんなワードプレスの機能ですが、ブロックエディタ機能を使えば今まで全く出来なかったことも、社内で作業出るようになっていくと思います。
これからワードプレスを使ってみたいと考えている方や、社内でWordPressの機能を使ってホームページ制作をしたい、と思っている方もいらっしゃると思います。その場合は、まずブロックエディタの操作に慣れてくことから作業を開始します。
最新のフルサイト編集は、ホームページの全エリアがブロックと呼ばれるパーツでサイト構築が可能です。トップページの例として、ナビゲーションメニューブロックから、ブランドロゴ設置、ヒーローセクションブロック、ミドルセクションブロック、ページ下部のフッターセクションブロックまで、全てブロックエディタを使って直感的に編集できるのがフルサイト編集機能です。
過去の日本のテーマにはなかったと思いますが、海外のWordPressテーマでは、以前のブロックスタイルとカスタマイズ画面から、ある程度自由に編集できる人気のテーマもありました。そして今後はAI機能などを実装し、より直感的なブロックの組み合わせで、サイト構築への抵抗感を軽減する形にさらに進化していくはずです。
また、エディタ上で編集をサポートするサイドバーの機能もどんどん追加され、完全初心者でも簡単に!とまでは言いませんが、操作に慣れてけば、1ヶ月前後で簡単な編集ができるようなります。逆を言えば、古いサイト制作に慣れていると、扱いにくい機能やシステムになっていきます。
現在以前のバージョンはクラシックエディタと言われています。最近では対応を保証しないテーマやプラグインも増えてきました。特に2019年以前に制作したサイト編集機能のままですと、ワードプレスのシステムを稼働させるPHPやMySQLのバージョンが古いことでも動作が不安定になる場合が多々ありますので、早めのアップデートを推奨します。
※テーマを変更すると現在のサイトに何かしら支障が起きるケースがほとんどです。実行する場合は、バックアップを取るなど準備してから作業してください。特にワードプレスが推奨するPHPバージョンより、バージョンが古い場合は更新することも推奨します。
自由なCMSやブロックエディタの進化は誰の何のためのものか
2020年のパンデミック以降、改めて小規模な会社・店舗様でも、Webサイトの重要性を再認識したとの意見も増えました。Webサイト活用の幅を広げるWordPressをはじめ、CMSはより便利に一般的なものとして世界で普及が進んでいます。現在ではAI対応の開発も活発化しています。
その一方で日本では末端までの意識や共有できそうな情報量が乏しく、また意図的な部分もありデジタル後進国日本から抜け出ない部分の影響も感じます。
これはある物販会社の一例ですが、Webサイト制作(WordPress化されたHtmlサイトの実装)+管理+EC運営+広告運用費で毎月数百万円を代理店や提携事業者に支払っていました。売上は2年目から徐々に伸びはじめましたが、運営コストをカバーするには至らず、経費の圧迫から原価や人件費を抑える努力をしていましたが、結局体力が持たず廃業に追い込まれました。コスパが良いと言われていたECに力をいれたつもりが、本末転倒となった事例です。
また、別の会社では150万円内外でオリジナル(フルスクラッチ系)のサイト制作を依頼しました。その後、社内である程度操作できると思っていたら不具合が発生し、修正依頼をしたところ、サポート対象外とされ数十万円を追加で払うことになりました。このサイトもワードプレス化されていましたが、大きなメリットである投稿機能は全く更新されていませんでした。
理由は使い方が口頭や簡易説明書では実際の作業が難しかったこと、ワードプレスの更新頻度が高いこと、作業のサポートには管理費以外に別途費用がかかるとのことでした。そうなると結局わざわざワードプレス化しても、ワードプレスが使える環境を作らなければ、数百万円のメリットなど全くない感じないわけです。
※オリジナルという言葉は良くも悪くも捉え方です。プライベートブランドなどにもよく使用される言葉ですが、オリジナル制作とは、本来莫大な開発費用を要するため、そう簡単にオリジナルは制作できるものではありません。
シンプルなWebサイト制作にコードを書かない選択肢がより鮮明になる時代
世界のウェブサービス会社が推奨してきた、コードをほぼ書かなくてもちゃんとしたウェブサイトが構築できる、いわゆるノーコードシステムやローコードシステム、ワードプレスのような万能型CMSがようやく日本でも認知され、数十年対応できなかったウェブサイトを取り巻く環境に変化が出てきました。
代表的なシステムとしては、WordPressのプラグインで世界的なシェアを誇るElementor、WIX、Webfow、国内ではペライチ、STUDIO、BINDUPなど、ホームページ作成やWebサイト制作をより身近にして未来へ導くノーコードやローコード開発が、完全な初心者でも実用レベルで汎用的に普及していくことが、日本でも望ましいことは間違いありません。
ワードプレスはその先駆者的存在であり、世界のCMSの指標として今もトップを走り続けているCMSです。日本でも有名なWordPressですが、なぜか無料であるとかWordPressにしておけばいい的な、一種の違ったブランド化が進んでしまい、その利便性よりも流されるようにただワードプレス化が進んできた印象もあります。
ブロックエディタは地域の会社・お店のWeb実用化を進ませる
中にはWebサイト以外でも国産と思われるもの以外は、世界と日本では需要が違うといった見解も一部ではあるようです。しかし現在の日本は製造業は衰退の一途一途を辿り、インバウンド需要や海外からの投資、また円滑な各国との貿易取引がなければ完全に成り立たちません。世界と日本では違うと言われていた時代は既に終わり、今ではグローバルスタンダートという概念の中に日本は存在します。
ブロックエディタの活用にしても、今後は利用者の目的、用途、規模や運用に見合ったものを適切な形で普及させることができなけば、世界から遅れをとったこの25年を取り戻すことはできません。そして選択の幅を広げ、汎用できる一般的な技術を共有することで、イノベーションが起きやすい環境を整えることも重要です。
また、Webサービスやソフトは、海外で先行開発されたものがほとんどであり、プログラミング言語も日本語では書けません。今後も日本が世界の中でこの分野をリードすることはまずないでしょう。スマートフォン一つとっても明白です。
現在では日本の70%以上のシェアを占めると言われるIphoneは米国、トレンドをいち早く取り入れるGalaxyは韓国、それを機能とコスパで対抗するOPPOや華為などの中国デジタル集団に加えて、サプライヤーは中国、台湾、インドであったりと、もう日本では到底対抗できない時代になっている現実を、私たちは真摯に受け止める必要があります。MADE IN JAPANが世界に旋風を起こした時代のまま、ある部分がその残像のある感覚のまま進んでいくわけにはいきません。
そうでなければ、現在のように世界の市場からインフラの整備されたお買い得な国として、日本が世界との競争力を失っていく流れにはならなかったはずです。デジタル後進国と呼ばれた最大の要因として、市場の変化を嫌う連鎖を日本の未来を担う次世代にまで持ち込んではいけないと考えます。
WordPressのブロックエディタをメインにFSEへの移行も大きなきっかけです。WEB関連コストに毎月数十万の予算の割けない、中小企業や小規模なお店など地域の隅々にまで浸透させ、ネットショッピングが浸透した今、身近なデジタル活用は高額なコストをかけなくても維持が可能になりました。
世界の基準に合わせて、良い意味で世界に負けない基準で競争し、様々なモノへの意識をアップデートするいいタイミングだと思います。
末筆
ブロックエディタやフルサイトエディティング(FSE)という主題から、だいぶ趣旨が違う方向へ進んだ気もしますが、今後さらにWebサイトやデジタルへの気軽なファーストタッチが可能な環境づくりが大切です。
ワードプレスやブロックエディタを推奨してきましたが、Web制作には欠かせない基本のHtml、CSS、Jsなどフロント部分の一般的な言語が今後なくなることもあり得ません。人工知能を中心とした生成AIが活用される時代には確実に進んでいますが、人間が正しい用途を判断していくことが前提となります。
むしろ、今後さらに高度な技術をより身近なものへと進化させることや、ご依頼に対するODM、OEMサイト制作には必要不可欠です。
また、Web制作業者や管理会社側に対する不信感や依頼者側の不安感を拭い、ホームページをアプリを使うように気軽に活用できる、便利な会社やお店のデジタルツールの主役として再普及させる必要もあると思います。
そして、Webサイトは制作してもらうだけで、その後活用するものではないと思われていた地域の中小企業、お店、少数精鋭事業者様、そして企業のバックグラウンドを支えている同業者の皆様に、少しでも共感していただける部分があれば嬉しい限りです。